木月保育園のブログ「小さなもみじの物語」

「これぞ、交渉術!」フリー編 

2026.09.07

まだまだ暑い日が続いていますが、朝夕には少しずつ秋の気配を感じられるようになってきました。子どもたちは夏の遊びを楽しみながら、元気いっぱいに過ごしています。

先日、早朝保育の時間に、2歳児のA君と1歳児のB君が車の玩具で遊んでいました。二人で仲良く、交互に車を押して楽しんでいたところ、後から登園して来た2歳児のC君が、その車をスッと取って走っていきました。「あっ!ケンカになるかも?」私は思わず、二人の様子に注意を向けました。すると、A君は走っていくC君を追いかけ、「かーしーて!かーしーてー!」と、言葉で交渉を始めました。それでもC君は、なかなか車を返してくれません。するとA君、今度は少し作戦を変え「ちょーっとだけ!」と、さらに交渉。思わず「なるほど!」と感心してしまいました。ちょっと前までなら、無理やり取り返そうとしたり、手が出てしまったりすることもあったA君。それが今では、相手に気持ちを伝えるために、ちゃんと言葉を使っているのです。「どうしたら返してもらえるかな?」そんなことを考えながら、A君なりに言葉を変えて伝えている姿に、私はA君の大きな成長を感じ、感動してしまいました。とはいえ、A君の粘り強い交渉にもかかわらず、C君はなかなか車を返してくれません。そこで保育士が間に入り、二人の気持ちを代弁し、「あとで貸してもらおうね」と約束することで、C君もA君に車を返すことができました。ちょっぴりショボンとしているC君。すると、二人の様子を心配そうに見ていたB君が、C君を励ますように絵本をそっと渡してくれました。その姿にも、なんだか心が温かくなりました。

 

 

 

 

「取り合い」は、困ったことでしょうか?保育園では、こうした玩具の取り合いや、子ども同士のちょっとしたトラブルは日常茶飯事です。大人から見ると、「取り合い=困ったこと」と捉えてしまいがちです。でも、子どもたちにとっては、こうした経験こそが、社会性や共感性を育む大切な学びの場になっています。子ども同士で同じ遊びを楽しんだり、相手に「いや!」と伝えたり、玩具を取り合ったり、思いがぶつかったり……。大人との関わりでは得られない、子ども同士だからこそ生まれる経験があります。一人で遊んでいるときには見えにくい気持ちも、相手がいるからこそ表に出てきます。「取られて嫌だった」そんな自分の気持ちに気づくこと。そして、相手にも自分とは違う気持ちがあることを知ること。ぶつかったり、泣いたり、譲ったり、譲ってもらったり、仲直りしたり。その一つ一つの経験が、「相手にも気持ちがある」ということを理解する土台になっていきます。そして、その経験を重ねる中で、子どもたちは自分なりに考え、試行錯誤していきます。A君が見せてくれた「かーしーて!」から「ちょーっとだけ!」への変化も、まさにその一歩なのだと思います。これからAIがますます身近になり、知識を調べたり、情報を整理したり、正確に答えを出したりすることは、今まで以上にAIが得意になっていくでしょう。そんな時代だからこそ、人と人との間で、お互いの気持ちを伝え合い、折り合いをつけていく力は、ますます大切になっていくのではないでしょうか。相手の気持ちを想像すること。自分の気持ちを言葉にすること。相手と話し合いながら、お互いが納得できる方法を探すこと。こうした力は、特別な授業で身につくものだけではありません。毎日の遊びの中で、友だちとぶつかったり、考えたり、言葉を交わしたりする経験の積み重ねによって、少しずつ育っていくものです。「かーしーて!」「ちょーっとだけ!」そんな小さなやり取りの中にも、これから社会を生きていくための大切な力が詰まっています。

子どもたちが遊びの中で、人と関わる楽しさや難しさを経験しながら、自分なりに考え、伝え、相手と折り合いをつける力を身につけていけるように。大人がすぐに答えを出してしまうのではなく、時には少し離れたところから子どもたちのやり取りを見守りながら、一人ひとりの成長を支えていきたいと思います。A君の「かーしーて!」から始まった今回の出来事。まさに……これぞ、交渉術!子どもたちの小さな日常の中に、未来につながる大きな学びがありました。フリー編 中澤

 

top