木月ほほえみ保育園のブログ「そこはっ!ほほえみっ子」

どれが転がるかな? (2歳児クラス・るんるん組)  

2023.09.18

ある日の自由遊びの時の出来事です。

車で遊びたいというリクエストがあり、その日は机を斜めにして車を滑らせて遊んでいました。一頻り車を滑らせて遊ぶと、A君が車を片付けて、長方形の赤い積み木を持ってきました。早速、斜めになった机に赤い積み木を置きましたが…A君、ちょっと浮かない表情です。車と同じように滑ると予想していたようでしたが、積み木は置いた場所から滑ることなく止まってしまいました。

するとA君、無言で立ち上り、今度は車を入れた透明のプラスチックケースを机に置き、滑るかどうかを試していました。しかし、重くて動きませんでした。2回続けて滑らないことが続きましたが、A君の好奇心は止まるどころか探究心に満ち溢れていました。

次は積み木が入っているカゴの中から、円柱の積み木を持ってきて滑らせていました。結果は…?

コロコロと転がりました!今度はA君の思った通りに滑ったようです。

円柱の積み木が転がった瞬間、A君から「見て〜」のアイコンタクトがあり、保育士は喜びを一緒に共有しました。

その様子を見ていたC君、A君の真似をして積み木を滑らせ始めました。

ですが、A君のように滑りません。「うーん…」とC君が困っていると、その表情を察したA君。「これ(円柱)ならコロコロするよ」と教えてあげていました。ヒントをもらったC君は、A君が持っている積み木と同じ物を探してきて滑らせていました。

 

この頃になると別の遊びをしていたお友だちも興味を示し集まってきました。するとDちゃんが、おままごとで使っていたお皿やコップが滑るか試し始めました。

「お皿滑らないね」「コップも動かないよ」という声が挙がります。そこへA君、すかざず「コップをこうすると滑るよ」とコップを横に倒して滑らせる方法を教えてあげていました。積み木で試行錯誤し、円柱が転がったことから、コップを横にすると転がると予想を立てたようです。コップはA君が言った通り、コロコロと転がりました。ですがその後、子どもたちは、大爆笑!

コップは放射状を描いて転がり、予期しないところで机から落ちて大爆笑となったのです。

 

時間としては30分程の出来事でしたが、この時間はとても大切な気付きや学びがたくさんあったと思います。この一連の様子は、本園でも今年のテーマとしている、STEMの芽ばえに繋がります。

STEMとはS:Science、T:Technology、E:Engineering、M:Mathematicsそれぞれの頭文字を取った言葉で、科学・技術・工学・数学の教育分野を総称した言葉です。STEMは「教えられて覚える」「与えられた課題を解く」といった従来の受動的な教育法とは異なり、新たな時代に必要とされる自発性、創造性、判断力、問題解決力を養う教育方法となります。

 

今回、A君が試行錯誤している様子を保育士は声を掛けず、あえて見守っていました。それは、STEM教育の根底には「自分で学び、自分で理解していく子ども」を育てるというねらいがあるからです。

 

子どもを慎重に見守っていると気付くのですが、子どもは集中して何かを行い、ふとそれができた瞬間、顔を上げて保育者のほうを見て、アイコンタクトを送ってくれるんです。今回のA君もまさにそうでした。保育者は、そのときににっこりと目線を合わせて『うんうん、見ていたよ』の合図を送ります。すると子どもはにこっと笑い、安心した様子でまた集中して遊び始め、探究を続けます。

 

子ども達の『なぜ?どうして?』と日常に溢れている事象への不思議、興味や好奇心、子ども達一人ひとりの今しかない瞬間や発想を大切に日々保育を行っていきたいと思います。

山野

 

 

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