木月保育園のブログ「小さなもみじの物語」

「勝ちたい思い=生きる力」幼児組編

2019.09.02

今年の夏は、長雨に猛暑にとなかなか外遊びができない日が続きました。幼児組ではプールや粘土などの水遊びの他、気温が高すぎて外に出られない日も多かった分、お部屋での遊びの盛り上がりも見せていました。

最近はきりん組さんは野菜かるた、ぞう組さんはトランプが流行り始めています。うさぎ組さんは、遊んでいる姿に、『なんだろう?』と覗きこむ子がちらほら。ぞう組さんのトランプに、職員も入って、ババ抜きを始めました。『おじいちゃんおばあちゃんのおうちに行った時にやったことある!』という子もいれば、初めてでルールを教えるとこから始まる子もいます。そんなトランプが出始めた頃のお話です。

ある雨の日の出来事です。Aくんをトランプに誘いました。ババ抜きは初めてだったようなので、同じマークが2つあったら出すこと、順番にお互いの持ちカードを引くこと、ババが最後に残らないようにすることの3つのルールを伝えました。まず最初の難関はカードを手に持ち、同じカードを探すところでした。同じカードは見つけられるものの、抜こうとする度にカードが手からポロリ、拾ってはまたポロリ…。うまくできない様子。怒るかな?と思いながら様子を見ていましたが、『う~ん』と唸りながらも、1人で黙々とがんばっていたAくん。我慢強さを見せてくれていました。数日後、楽しかったようでまたババ抜きをしていたので様子を見ていると、やはりまだカードが持ち切れず、落とす事が多かったのですが、Aくんは考えテーブルに広げたのです。もちろんみんなにカードは丸見えですが、そんなことも気にならない様子です。回数を重ねるうちにだんだん勝ち負けのゲームか分かってくるとカードを見せてはいけないと分かり、カードを配っている最中から合わせて出すということができるようになったのです。ゲームの理解からのAくんの工夫、その試行錯誤を見ることができました。

次の難関は順番です。最初は二人で遊んでいたので、順番に取り合い、必ず同じカードになり、出すことができました。でも、興味のあるお友だちが増えて、三人四人で遊ぶようになると、誰のを取って、誰に取ってもらう、誰が取るのを待ったら自分の番かも考えなければいけなくなります。ババ抜きをしたことがあるBちゃんも、ついつい順番が混乱してしまうことがあります。他のお友だちがしている間もちゃんと見ていないと、今どこまで回っているかが分からなくなってしまうこともあります。最初は、その都度、誰が取る番かなど職員が声をかけていましたが、だんだん慣れてくると、子どもたち同士で『Aくんだよ』『Bちゃん、やった?』など教えてあげたり、聞いたりするようになりました。

今では子どもたちだけで楽しめるようになり、お部屋遊びの時には、トランプを借りにきています。勝ち負けで悔しがりながらも、お友だちとのやりとりも楽しいようで、『まだまだ、もう一回!』とむしろ終われない時もあったりしながら盛り上がっています。

カードゲームは、とてもたくさんの発達、成長をすることでできるようになり、またさらに成長する玩具です。あの小さいカードに『文字・数字の識別・理解』カードを持ったり取ったりする『指先の動きや力加減』、1人ではできない『友だちとのやりとり・順番で待つ意識』とたくさんの心身の成長に繋がります。そして、ここに自ら勝ちたいという思いで工夫を重ねていく『試行錯誤』がとても大切なエッセンスとなります。カードゲームは勝つためのこうした方がいいというものがありません。勝つための道筋を教わるのではなく、どうしたら勝てるかなと一緒に考えたりしています。その繰り返しが、これから何かにつまずいた時に、いろいろな角度から考えてクリアしていく力にも繋がっていきます。楽しい遊びの中で、これからを生きる力を身に付けていってもらいたいと思います。

 

 

 

幼児組       坂本 摩利

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