木月保育園のブログ「小さなもみじの物語」

「年長さんの特別なお仕事」(フリー編)

2017.07.22

 7月も残り数日。毎日暑い日が続いて大人はグッタリですが、園庭からは待ちに待ったプール遊びや水遊びを楽しむ元気な子ども達の声が響いています。今回は事務室でよく見る年長の特別なお仕事をご紹介します。
 年長さんのお当番さんは、1人だけ皆んなと別行動をしています。そのお当番さんは【事務所当番さん】と言って、事務室へ行き園長先生や副園長先生に3歳児・4歳児・5歳児の3クラスの人数を皆んなの代表で報告をします。その時に「うさぎさんの男の子は●人、女の子は●人、合わせて何人!」と3クラスの人数を計算する大仕事があります。暗算は、まだ難しいので数を数えるにはマグネットを使用しています。大きな10の固まりのマグネット。中くらいの5の固まりのマグネット。小さい1のマグネットがあり、これらを利用して年長さんは数えています。
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 たまに私もお手伝いをすることがあるのですが、間近で見ると年長さんのお当番さんがしっかり数を数えている様子が良く分かります。Aちゃんは、マグネットの中に書かれた黒い点を一個一個指で抑えながら小さな声で数えていました。Bくんは、目だけで黒い点を追って数えていました。首を小さく振っていたので、自分の中でカウントしているのだと思います。Cくんは、大きなマグネットが数の固まりということを理解していて、すぐに答えていました。自分の分かる方法で答えを出して、「正解!すごいね~!」と保育者に言われると、皆んな嬉しそうにしています。間違えてしまった時は保育者にヒントを出してもらいながら、もう一度数えて自分で正解を出しています。事務所に入って来る時は少々緊張気味の年長さんですが、帰りはやりきった自信満々の顔で事務所から出て行きます。一仕事終えたぞ!という感じでしょうか。幼児のクラスは1クラス23人なので、年長児で二桁の足し算が出来ているということになりますね。我が家の長女が小1なのですが、算数のプリントで一桁の足し算をやっているので、一年生の夏までに習うこと以上のことをやっていることになります。
 このような数への概念は、子ども達の中でどのように育っていくのでしょうか?幼児期の子どもは、物を並べたり・数えたりすることが大好きです。しかし 100 ま で数を唱えられて得意になっていた子どもが、おやつのクッキーを5 つ取ることに戸惑う姿があるように、本当の意味で数を理解できているわけではありませ ん。数には、いろんな意味があります。数そのものである「数字」(1.2.7.9等)ある多さや量をあらわす「集合数」(1個、2個)ものごとの順序の位置づけ、何番目、~より多い(少ない)を示す「序数」(一番目)TVのチャンネルや電話番号などの「記号数」(110番)大人は当たり前に使い分けていますが、子どもは「いーち、にー」とお風呂で数を言っていても、「クッキーを4個持ってきて」と量としての数を言われると「?」となるようです。子どもの数概念は、5 歳半以降に獲得すると言われています。物の量をたくさん・ 少しと感じることから始まって、量から数へと分化していく過程の時期が幼児組の子ども達です。
 一方で、1歳未満の赤ちゃんでも「3」までの量は感覚的に理解しているらしいことが実験によって明らかになってきました。サビタイジング(subitizing)と言って、少ない数であれば一瞬に脳が視覚的に量を把握し判断しているというのです。このもともと持っている数の感覚に、日常の生活や遊び、大人の声かけなどの経験から獲得される新しい概念があわさって、数の認知の能力がだんだん培われていくそうです。数を理解するにはさまざまな情報処理が行われています。数の概念は視覚・聴覚・手指の器用さ・発声・抽象化の能力・意欲なども複雑に絡み合いながら発達していきます。しかし多くの専門家が口を揃えて言うのは、「いちばんよいのは、早期教育やフラッシュカードなどの特別なことは何もしないこと」。日頃の遊びの中で、自然と数概念は身についていきます。子どもの興味のある事や遊びの中に、大人が色々な数に興味を引き出す仕掛けを用意出来ると良いのではないかと思います。
 木月保育園では年長さんの事務所当番の人数計算をしています。これは数に興味を持っている今の時期だからこそ行っていることで、ただのきっかけに過ぎません。なので、これ以上の計算をやらせようと思っていません。反対に生活の中では食事の場面では自分でご飯の量を決めたり、決められた数の果物やおやつをとったりします。生活や遊びの場面では、階段に数字が書かれていたり、毎日シール帳で今日の日付にシールを貼ったり、朝の会では日めくりカレンダーを使っています。サイコロを使って双六をしたり、時計の数字を見て次の活動を意識したりしています。こんな風に子ども達が遊びや生活の中で、自然に数や数字に慣れ親しむ仕掛けを沢山用意しています。是非保育園に来られた際には、子供達の生活の中に隠された沢山の仕掛けを見つけてみてくださいね。

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中澤 明日香

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