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「脳の働きから見たしぐさの意味」

2016.01.15

 身体の「しぐさ」による表現を脳の働きから見ると、どのようなことが起きているのでしょうか。それを説明するのが、何度かブログに登場している「ミラーニューロン」の働きに関係するようです。このニューロンである神経細胞は、自分の動きでも、他人の動きでも同じように反応するという物です。この発見は、まだまだ懐疑的な意見ももちろんありますが、近年の神経科学の中で、最も重要な発見で、画期的と言われています。それは、この発見によって、神経科学のみならず、多くの周辺領域に影響を与えることになりました。
  このミラーニューロンの最も重要な点は、他者の動きそのものに反応することではなく、他者の行動の目的に応じて反応することです。こんな例が提示されています。
 例えば、実験者がボウルの中に入った果物に向かって手を伸ばします。すると、それを見ていたサルのミラーニューロンは、自分の手を伸ばしていないのに、他人が行う行動をただ見るだけでも活動します。しかし、まったく同じような運動を行ったとしても、サルがボウルの中に果物が入っていないとわかっている場合には、反応を見せないというのです。
  つまりこれは、ミラーニューロンが単純な視覚刺激に対する反応ではないことを示しています。この結果を通じて、ミラーニューロンを発見したリゾラッティらは、ミラーニューロンが反応しているのは、他者の行動意図の内容を理解した反応だと主張したのです。この他者の行動意図の理解に関与しているという発想は、非常に斬新的なものでした。これは、「心の理論」とも密接なつながりを持つ重要な主張ですし、私たちが様々な学習を行うとされる模倣行動を通じて行動の意図が共有できるというように発展できるからです。
  意味の通じない「しぐさ」や行動、模倣、これら全てが意味があり、子ども達の育ちには重要なのです。どうか少しでも、子どもの行動や「しぐさ」を理解して、共に分かち合える関係を作っていきましょう。

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