赤ちゃん研究

「近代的社会のスキンシップ」

2014.07.12

 ベビーカーは、近代的社会で乳幼児を一緒に連れて移動する際に、もっとも一般的に使われる道具の一つですが、ベビーカーでは、押し手の大人と乳幼児のスキンシップはほとんどないに等しいということをジャレド氏はこう指摘します。「特に、ベビーカーによっては、乳幼児はあお向けの水平に近い姿勢で乗せられる時には、押し手の大人に顔が向くように、進行方向とは逆の方向に顔を向けて寝かされる。つまり、乳幼児の視界が押し手の視界と逆向きになっていて、ふたりが同じ世界を同時に見ないのである。もちろん、アメリカ社会においても、ここ数十年来、乳幼児を座った姿勢で支えられる、ベビーキャリアやおんぶひも、ウェストポーチ型の抱っこひもといった、一緒に抱いて歩行できる道具が一般的になって来ている。しかし、これらにしても、その多くが、乳幼児と介護者の顔が向き合うように設計されているのである。
 顔の向きがこれとは対照的であるのが、伝統的に実践されてきた、ベビースリングやおんぶといった方法による移動である。この方法ではふつう、介護者が乳幼児を座ったままの姿勢でまっすぐ抱き上げ、視界を進行方向にむかせ、乳幼児と介護者の視界が同じになるようにして移動する。」
 この指摘も、授乳中は母子が赤ちゃんと向き合い、そのほかの時には「共視」とか「共同注視」というように大人と同じものを見るという経験がいいのではないか、それを可能にしたのがおんぶだったのではないかと思っています。赤ちゃんは遊んでいるときにも、養育者が自分をいつも見ていてくれているという安心感というよりも、自分と同じものを見ていてくれているかという安心感を求めている気がしています。ですから、定期的に振り返って確かめるのは、自分が遊んでいるものを一緒に見てくれているかだと思うのです。それは、自分を見張られているという感覚ではなく、そのものに感動した時、そのものに驚いた時に共感を求めるからだと思います。
 保育中に、赤ちゃんが一人で何かで遊んでいて、振り向いた時、「大丈夫、ここで見てあげているよ!」と声をかけるよりも、「ほんと、それ面白いね!」とか「不思議だね」というように子どもが遊んでいる対象物に視線を向け、その気持ちに共感してあげることが大切です。子どもの気持ちに寄り添い、日々の触れ合いの中で、お互い分かち合える「共感」の気持ちを持てるようにしていけると良いですね(^^)V

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