園長日記

2017 年 4 月 15 日 土曜日

 コミュニケーションにおいて「間」が重要な役割を果たしていることが、研究から分かっていました。さらに、赤ちゃんの実験では、赤ちゃんが見るお母さんの映像を、過去に記録していたビデオに切り替えると、やはり注視時間が短くなることが分かりました。この場合は、お母さんの映像は、時差があるだけでなく、赤ちゃんの反応にまったく呼応していないそうです。それについて、藤井さんは、赤ちゃんがモニターを見るのは、モニターを通じて赤ちゃんとお母さんとの間に、「あー」と言えば「うー」のような即時的かつ双方向的なコミュニケーションが成立しているからなのだと考えているようです。
 やはり、コミュニケーションには、ライブ感が必要なようです。それは、コミュニケーションを成立させるためには、双方の時間の流れが同期していないといけないということを示しているのです。特に、親子の場合とか、赤ちゃんに対しては大人同士と違い、いったん途切れた時間の流れを意識的につなげることができないようなのです。と言うことは、脳科学的にいうと、他者とのコミュニケーションは、同期したリアルタイムの時間で行うということが、脳の中での前提条件となっているようなのです。もともと、人類が社会を形成し、他者とのコミュニケーションをとる場合、自然環境の中では、時差のある会話を行われることは、ほとんどないわけですから、当然、人類が得てきた当たり前の機能だということです。
 もし、現代の私たちが、時差を持ってコミュニケーションをとっても理解できるとしたら、その能力は生後獲得されるもので、認知的に高度な処理を必要とすると考えられています。この認知的な処理とは、時差を生じさせる間の悪さを間の悪さととらえず、時系列的に断絶した情報を、自分自身の時系列に再度並べ直して理解するという作業になるであろうと藤井さんは言います。そのコミュニケーションは、実時間で行われるモノと異なる種類のコミュニケーションになるのではないかと思っているようです。
 たとえば、こんな例を挙げています。ふたりが対話している様子を録音して、それを音声で聞くと、両者の間で交換される情報の内容は明確で間違えようがないのです。しかし、その対話を文字に起こすと、意味が変わってきます。音声では完璧に意味が通っていたはずの会話が、まったく意味が通らなくなることも多いのです。最近の原稿は、対話を文字に表したものが多いのですが、校正しようとしたら、文のつながりが変であったり、誤解されるような言い方であったりすることが多いと思います。そのときの対話では、聞き流すということや、語尾が変でも内容を読み取れるのですが、それを文字化すると意味が通じなくなることも多いはずです。
 これを藤井さんは、「リアルタイムでの情報伝達には、文字化したときに抜け落ちてしまうような、同時性に依拠したなんらかの時系列情報が含まれている可能性があるようです。」と書いています。子どもに注意するときでも、後になって「あの時は悪かった!」と言っても、悪かったことを理解するのが困難でしょう。できるだけ、リアルタイムで注意をしてあげた方がいいのかもしれません。
 このように「間」を普段から意識して子どもと接することは少ないかもしれません。しかし、「間」を意識することで、もっと良いコミュニケーションがはかれるかもしれません。ご家庭でも挑戦して見てください。

2017 年 4 月 1 日 土曜日

    暖かな春の陽気と共に、今年も大勢の新入園児を迎えることが出来ました。この「園長日記」では、木月保育園で大切にしている保育について、専門的な内容を載せるようにしています。ちょっぴり難しい時もありますが、子育てのヒントになる内容もあると思いますので、是非ともお読みいただきたいと思います。
    さて、今日からの1ヶ月、新入園児の赤ちゃんは、毎日よく泣いて生活するようになるとは思いますが、赤ちゃんと接する上で「間」の取り方はとっても大切です。大好きな両親から離れ悲しくて泣くのは当然ですが、それ以外にも、この「間」の取り方が違う先生に戸惑っているのかもしれません。家では「つー」といえば「かー」とできていた関係が、また新たに築いていかなくてはいけないのですから大変です。先生たちも一人一人違うこの「間」を見つけ出し、それに合わせていくことで、赤ちゃんが少しずつ安心して過ごすことができるようになってきます。
のんびり屋さんな子、活発な子、今年もたくさんの子どもたちと出会えることにワクワクしています。1日も早くこの子たちの「間」を見つけ出し、楽しい園での生活を送ってもらいたいと思います。

(おたよりの続き)
 「間」についてのこんな研究があるようです。それは、コミュニケーションを通して「間」が重要な役目を果たしているということを、赤ちゃんとお母さんのコミュニケーションを通して明らかにしたものです。
 まず、赤ちゃんとお母さんをビデオカメラとテレビモニターを介してつなぎます。赤ちゃんはテレビに映ったお母さんの顔を見ることができ、お母さんもテレビモニターに映った赤ちゃんを見ることができるようにします。お母さんが話しかければ、赤ちゃんはそれを聞くことができますし、赤ちゃんのつぶやきをお母さんが聞くことができます。そのとき、映像と音声に時差を与えてみます。赤ちゃんは、時差がゼロの時は、お母さんが映っているモニターを注視します。そして、そのお母さんに対していろいろな語りかけをしているように見えます。しかし、このお母さんの映像に時差を与えて、数百ミリ秒から数秒遅らせた過去の映像を見せると、赤ちゃんに対するお母さんの反応が遅れることになります。この時差を両者の間に入れると、赤ちゃんがモニターに注意を払う時間が短くなります。つまり、時差がある場合には、赤ちゃんとお母さんの間に双方向性のコミュニケーションが成立しにくいということになります。
 なぜ、このようなことが起きるかというと、おそらく、両者の間に発生しているコミュニケーションの流れが、人為的な時差によって断絶するからではないかということを、「予測脳」についての著書を出している、ずいぶん前に話題になった理化学研究所の研究センター適応知性研究チームのリーダーである藤井直敬さんは考えています。
朝のニュースで、海外で起きた事故の実況中継をテレビで見ていますと、最近はよくなっていますが、かなり現地のアナウンサーとスタジオとのやりとりに時差があることがあります。すると、分かってはいても、聞いていて、その流れがスムーズではなく、わかりにくくなってしまう気がします。この時、コミュニケーションの流れを維持するのには努力が必要ですが、赤ちゃんの場合、それがいったん途切れてしまうと、注意を維持し続けることは難しいと藤井さんは指摘します。
 赤ちゃんと接する時に、テレビを見ていたりスマートフォンをしながらだと相手にしてもらえなくなってしまいますね。今しかない大切なこの瞬間を逃さないようにしましょうね。

「間」の取り方について4月15日ごろHPに載せます