園長日記

2014 年 10 月 31 日 金曜日

 いよいよ、来年4月より、子ども・子育て支援新制度が実施されます。今年度から増税された消費税の一部を基に、子どもと子育てをする保護者に対して、「量的充実」と「質の改善」を実現することが目的です。それに伴い、保育園と幼稚園を一体とした「子ども園」というものも誕生します。当園においても、この制度のもと、今までとは変わってくるところもあるようですが、今はまだ、多くが明らかになっていません。
 そのような中、幼児教育に対しても多くの意見も出されたようです。「保育園とは違い、幼稚園は教育をやっているが、保育園は子どもを遊ばせているだけだ」との意見もあったようです。私はこの話を聞いた時に、幼稚園では小学校と同じような教科だけを教えているということを言いたいのかなと思い、少し残念に思いました。
 就学に向けた幼児期の育ちには国語や算数と言った教科を教えること以外にもたくさんの大切な学びがあり、それらを日々の保育の中に、上手に取り入れてきたはずです。自分達の立場を守るために出た言葉かもしれませんがとても残念です。元々の設立の経緯は違うけれども、就学前教育を共に行ってきたのは同じはずです。人格形成をする大切な時期の子どもを預かる施設なのに、違うことを教えてきたとなると子ども達の将来が心配になります。日本の将来を支えていく子ども達が、自信を持って、自ら成長していくように育ってほしいと思います。

(おたよりの続き)
 アメリカの労働経済学者・ヘックマンの研究とは、「大人になってからの経済状態や生活の質を高める上で、就学前教育が有効である」ということを実証したのです。この知見は日本の教育関係者に大きな衝撃を与えました。
 教育の目的、成果は、その教育によってどれだけ効果があるかは、分野によって違います。例えば、労働経済学の分野では、労働経済学者は教育を、個人の所得や労働生産性を伸ばすための「投資」として捉えます。どのような教育投資をすれば、効果的に所得や労働生産性を上げることができるかが、労働経済学者の関心事です。これは、一見刹那的に見えますが、広い意味で考えれば、教育によって、どれだけ社会貢献ができるかということになります。現在の日本においての問題は、少子化ですが、それに対して「子どもを増やしましょう!」というよりは、「税金を納める人材を育てましょう!」ということです。
 現代は、引きこもり、ニート、現代うつという症状の若者が急増しています。その若者を支えているのは、多くは、その若者の親であり、祖父母であることが多いようです。そのような社会の数年後は目に見えています。経済的に子どものことを見るのはおかしいということよりも、その点が、生きる意欲、主体的な生活、困難から立ち上がる力などに影響してくるからです。そこで、多くの研究者が興味を持って行ってきたのが、若年失業者を対象とした教育投資に対する研究でした。その結果分かったのは、「失業者訓練は、教育にかけた公的なコストに比べて、得られる効果はそれほど大きなものではない」というものでした。言い換えれば、投資額に見合うだけの経済的利益がなく、費用対効果が悪かったのです。 これは学校教育においても、同様の知見が得られています。
 アメリカではマイノリティの経済的貧困が社会問題となっていますが、なぜ所得格差が起こるかを分析すると、「学歴の違い」が大きな要因として浮かび上がってきます。当然、そうなると高等教育への投資を多くします。そこでアメリカでは、マイノリティの大学進学率を高めるために、過去にさまざまな補助政策が行われてきました。しかし、教育投資効果は低いという結果が出ています。では、大学段階で教育投資をするのが遅いのなら、高校段階や小・中学校段階ではどうかと研究対象を遡っていくと、いずれの段階でも十分な効果は表れていないということが明らかになってきました。日本では、いまだに高校の無料化などを進めています。しかし、調査をしてみると、所得階層別の学力差はすでに6歳の就学時点からついているのです。この段階でついた学力差は、後の経済格差にも直結します。そしてこの差は、就学後に低所得の家庭の子どもを対象にさまざまな教育投資を行っても、容易に縮まることはないのです。
 そこで、ノーベル経済学賞の受賞者でもあるシカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授は、就学前の子どもに対する教育投資効果に着目し、「就学後の教育の効率性を決めるのは、就学前の教育にある」とする論文を、科学雑誌『Science』で発表しました。彼はまた「恵まれない家庭に育ってきた子どもたちの経済状態や生活の質を高めるには、幼少期の教育が重要である」と主張しているのです。

 

この続きは11月15日頃載せます。

2014 年 10 月 11 日 土曜日

 カプラの制作者のトムは、美術史を学んだ後、25歳で家具を復元アンティークショップをオープンします。しかし、彼は10歳のころからお城を建てたいという夢を持ち続けていました。そこで、彼は、夢を果たすために自分の店を売って、フランスの古い城を手に入れます。そして、それを修復するための計画を立てます。そのために、ミニチュアの城を作るために、木製の立方体で製作しようとしました。しかし、キューブは、屋根、床、まぐさなどの部品を再現することがあまりにも巨大だったことに彼はすぐに気づきました。彼は試行錯誤するうちに、厚さ、幅、長さの比が1:3:15ある木の板を使ってミニチュアを作ることを思いつきます。それが1988年にフランスから発売されたカプラです。
 カプラは各国の玩具賞を受賞しています。また、フランスの教育省が推薦する教育ツールです。このように確かにカプラは素晴らしい遊具かもしれません。しかし、その素晴らしさは、子どもたちにとって魅力的なものであることがまず大切です。しかし、どうしてもこれを使ってほしいときには、その素晴らしさを説明しなければなりません。カプラ本社のHPでも、まずその説明から入ります。例えば、「カプラの使用は、留め具なしに、3次元空間内のアイテムを整理する機能を開発し、子どもが問題に関するその作用手段を発見し、改良することを可能にする。」とあります。これは、「カプラを使うことによって、幾何学、物理学、技術の基本的な概念の獲得を促進し、子どもを芸術、形やボリュームの宇宙、視覚芸術の世界へ導き、バランスと集中の感覚を魅了し、熱意をそそります。」となると、少しフレーベルが考え出した積み木の概念の説明に近くなります。さらに、「発揮ロジックと想像力の両方を使用していると同時に、知的投影と反射や手先の器用さを必要とする複雑な構造を持っているために、知性と手の両方を使用します。そして、すべての年齢層に適している完全な遊具であり、しかしゲームが持つ生態学的な限界を克服し、進化論、建物などを統合するための優れたサポート言語表現である。」と書かれてあります。随分と理屈っぽい話になると、私はかえって冷めてしまう部分があります。
 乳幼児において、子どもが熱中するものは、きっと、自分たちの遺伝子を子孫に残すために必要なことを理屈ではなく、学んでいる気がします。これら全てを一つ一つ大人が教えていくのではなく、子ども集団の中で、上手に伝承されていくのはすごいなと思います。そして、どの子どもも、真剣な眼差しで、楽しくやっていることが何よりうれしいですね。

rimg1013