園長日記

2011 年 10 月 31 日 月曜日
 先日、幼児組に行くと、年長の男の子があや取りをしている手を私に見せてくれて、「とって!」と言われました。あや取りの苦手な私は取ることが出来ずおどおどしていると、ぞう組の女の子が上手に取ってくれました。お部屋を見てみるとぞう組に限らず、きりん組の子ども達もやっていました。職員に聞くと、あや取りを出しておいたら少しずつ興味を持つ子が出てきたので、数人にやり方を教えたと言っていました。あとは子ども同士で教え合ったり、本を見て自分で練習したようでした。今ではうさぎ組の子たちも興味を持つようになっています。子ども達には早い時期から特定のことを教え込む早期教育より、大人や友達との関わりを通して多くのことをマネることが今の時期には必要です。上手に出来るようになった子は子ども先生として多くのことを教えてくれるようになっています。(^^)v (おたよりの続き)  子どもの育ちは、その時期その時期に大切なことがあります。それぞれの時期に蓄積された力が、望ましい将来を培う力になっていくのです。そういう意味で、早期教育という意味は、後でやるべきことを早くやるとか、人より早くやることではなく、早い時期にやるべきこと、早い時期にその力を引き出されておく必要があることということになります。そこで、「早期教育では何が一番重要か」「早期教育として何をすればいいか」について、考えてみたいと思います。  子どもは、生まれついたものを持っています。ある遺伝子を受け継いで来ています。では、その時期には、大人は子どもには何もできないのでしょうか。何もする意味はないのでしょうか。生まれつきだから仕方ないということが言われたり、生まれてから人生が決められているということが言われている一方、環境によって人生が変わってしまったり、教育によって人間が変わったということも言われます。  1970年代に、人間の脳の神経細胞であるニューロンや神経回路であるシナプスは生まれてから数年間が最も多く、それ以降は、減っていくだけであり、育児とは、成長とは上手にこれを減らすことであるということが発見されています。人間の脳は、遺伝子に従って神経回路を作り、そして、その後の子育ての環境が作られた神経を壊してゆくということです。脳はこの減っていく過程で子どもの人格を作ってゆくのです。そのために、人間は生まれてからの8年間は、非常に大切な時期であると言われています。このことから、1990年代以降、国際社会では、乳幼児期の発達と学習が初等教育を含むその後の人生の経験や生活の質に極めて重要な意味を持つとの問題意識のもと、ECEC(乳幼児期における教育とケア)と呼ばれる分野への政策的な関心が高まってきているのです。  人間は、確かに神経細胞、ニューロンの数は生まれて数年が一番多いのですが、脳が育つというのは、数が増えることだけではないのです。それは、生きていくうえでの質が高まらないといけないからです。その質は、心を育てていくことになるのです。人類の心は、一個人の脳神経内に限定して機能するのではなく、さまざまな社会を構成している人どうしが相互に影響し合って、個人の脳も発達させていくのです。知識も人格も周囲の社会から学び取るものなのです。その方法として子ども、特に乳幼児期では顔と顔とを見合って会話をし、相手の行動を見て、共感して、模倣して、そして、知識が伝授されていくというのが基本的な伝達方法です。そこで、このような伝達方法が中心の乳幼児期には、こども集団を通じて人間関係を学習し、人類に蓄積された知識・教養・人格の遺産を受け継ぐことが必要で、それ以外の教育方法は現在のところ困難を伴うのです。ということで、よく「発達は環境を通して行われる」ということがいわれますが、早期教育というのは、「英語」や「学習」といった何か特定のものを教え込むことではなく、早い時期に、子どもたちにどのような環境を用意すればよいかということになります。 現在を生きる人だけでなく、長い進化の過程で人類が学び、獲得し、発展させてきたものを受け継いでいき、過去の知識、文化、人格までも学んでいく必要があるのです。このような巨大に社会化された脳機能つまりは「社会脳」を鍛えることが早期教育で重要となる一番のポイントなのです。  「社会脳」について11月15日ごろ載せます。 pa270067
2011 年 10 月 15 日 土曜日
 「子育て支援」の必要性が長く叫ばれてきました。それは、子育て支援センターのような施設だけでなく、保育園、幼稚園でもそのような機能が求められています。しかし、どのような親に対して、どのような支援をするのかということは、少しずつ変わってきているように思います。それは、親が置かれている社会の変化だけでなく、母親が子育てするのは本能であるという考え方が変わってきていることもあります。また、子どもは母親のもとで育てられるべきだという考え方も変わってきています。そこで、チンパンジーの研究から、子育て支援、父親の育児参加を見てみたいと思います。    授乳をすることが哺乳類の一番重要な特徴ですが、自然にその種にふさわしいような形で、授乳も含めた育児行動をどの個体もできるようになるかというと、多くの種でそうではありません。誰でも子育て能力は本能的に備わっているわけではないのです。それは、チンパンジーにおいても、ヒトにおいてもさらにそうではないのです。ですから、それを補っていくのが、その種それなりに、上手に育てないお母さんをどんなふうにサポートしていくかという行動の進化だそうです。京都霊長類研究所では、研究する中で、こう思ってきたようです。「チンパンジーのお母さんは、基本的には子どもを自分だけの力で育てます。けれども、ヒトの場合は、それをするには、あまりにもたいへんな子育てがお母さんに課せられてきました。これはヒトとなった時からそうなのです。独力で育てることの困難なお母さんに対して、ヒトという種は、その子育てを支える、援助する行動を種の特性として育んできたと考えられます。」    どうも、家族みんなで子どもを育てることが人間の特徴とすると、もっとも発達がかけ離れた1対1のペアによる母子関係だけで子育てをしているような最近の「家庭」というのは、不自然な形なのです。子どもは、母親からだけでなく、いろいろな人の中で育てられることが必要なのです。子どもには、いろいろな職種の人と関わりながら生活をし、学んでいくものです。松沢さんは、最近の子どもの虐待という深刻な問題の原因として赤ちゃんとのかかわり方で、何が不足しているかということに対して、「手のかかる子どもたちを育てるのは、お母さんだけじゃなくて、お父さん、おじいさん、おばあさん、兄弟、みんなです。共に育て、共に育つ。それが親子関係の基本だと思っています。では現代の日本が必ずしもそうなっていないならば、どこに原因があるか。はっきりしているのは、いまや3世代同居のような親子関係が消滅しつつあるということです。」と言っています。社会に向けての提言として、「現在の日本社会の親子関係が、かなり人間の本性と違ったものになっているとは思います。そうだとわかれば、人々の暮らしと自然の摂理とのかかわりをあらためて考える大きな切り口になると思います。」そうも言っていました。     園には多くのお父さんやおじいさん、おばあさんが顔を出してくれます。先日の運動会でも家族みんなで参加してくれました。誰か一人が大変な思いをしながら子育てをするのではなく、家族みんなで子どもの成長を喜びながらの子育てをしていけると良いですね。