木月保育園のブログ「小さなもみじの物語」

「子どもたちを惹きつける極意!その裏側を考える」1歳児あひる組編

2021.07.12

先日木月保育園でクラウンふくろこうじさんによるパフォーマンスショーがありました。ふくろこうじさんは、言葉を全く使わずに子どもたちとコミュニケーションを取りながらパントマイムやシガーボックスを使って、不思議で楽しいパフォーマンスを繰り広げるパフォーマーです。さて、その内容はと言いますと…軽いはずの新聞紙が拳の上で立ったり、ボールがないのにあたかもあったかのように袋に入ったりと、大人も目を奪われてしまうような圧巻のパフォーマンスでした。ぞう組の子ども達の様子を見てみると、身を前に乗り出して見ている様子。そして、あひる組の子はどうかな~と見てみると…

 

 

 

 

 

目を丸くしていましたが、特に反応はない様子…。ただ、ふくろこうじさんの方を見つめ、「前で何かをやっているぞ」というような表情。

ん??なんだなんだこの差は!?!?

「この反応の差…おもしろい!」年齢によって反応の仕方が違う子ども達。私自身、子ども達の前に出てパフォーマンスをするのが好きな性分。少し「この差」について専門的に考えてみました。

まず、ふくろこうじさんの「新聞紙パフォーマンス」。子ども(幼児)が反応していた場面は、立つはずのない新聞紙が拳の上で立った場面。「新聞紙=軽くて立たない」という概念が裏切られた瞬間でした。この場面を考えてみると、これは子どもたちが「新聞紙は軽くて立たない」という予想が立てられないと、新聞紙が立った時の裏切りに「なぜ!?」という疑問が生まれないと思います。ということは、この「なぜ!?」を感じるには、幼児組の子ども達に「予想を立てる力」いわゆる「論理的思考」(物事の道筋を立てて考え、一貫した話、説明ができるという力)が備わっているからだと考えられます。

さて、あひる組(1歳児)はどうだろうか。新聞紙が立つ場面では反応がなかった。ということは「新聞紙は軽くて立たないもの」という道筋が立てられていない様子。ということは、論理的思考がまだ備わっていないのではないかと考えられます。

 

また、概念の形成における発達の流れで考えてみると、3歳頃から目の前にないものでも言葉からイメージできるようになります。(リンゴ=赤くて丸い果物)、4歳以降になると、「大きい・小さい」「重い・軽い」などの区別がつくと言われています。このような概念、いわゆる「共通概念」がまだあひる組の年齢には備わっていないので、「新聞紙=軽い・立たない」という概念がなく、新聞紙が立った時にも反応がなかったのではないでしょうか。

以上の事から、幼児組とあひる組の子ども達の反応の差があったのでないだろうか…。と考えました。

とはいえ、ふくろこうじさんのパフォーマンスは言葉を全く使わずに、体の動作や音だけで子ども達に状況を伝えて楽しませていて、論理的なこと以外にも子どもを惹きつけるものがあったと思います。今回、ふくろこうじさんのパフォーマンスを拝見し、保育者としてとても勉強になりました。保育者である以上誕生会、ちょっとした隙間時間など、子ども達の前に立ち出し物をする機会が少なからずあると思います。その時の空気感もありますが、そんなとき、出し物も専門的に考えて行ってみることで、もっと、子ども達を惹きつけ、たのしませられる出し物ができるのではないでしょうか?僕たち保育者もふくろこうじさんみたいなパフォーマーになれる…かも!いやなってやる!

あひる組 小池 達哉

【参考】

・保育の教科書 保育士コラム「概念の形式?~保育でコミュニケーションの基礎を育てよう~」

・内田信子・津金美智子「乳幼児の論理的思考の発達に関する研究~自発的活動としての遊びを通して論理的思考が生まれる~」

 

top