木月保育園のブログ「小さなもみじの物語」

「小さなてのひらにあるもの」幼児組編

2020.02.03

新年を迎え、どのクラスの子どもたちも少しずつ新しいクラスに向けて動き出しています。ぞう組は就学に向けて、お昼寝の時間がなくなり、その時間は散歩や園庭などで思いっきり遊びを楽しんでいます。(夕方、眠気に耐えられず、船をこぐかわいい姿も…)

普段いろいろなクラスで使っている園庭ですが、お昼寝の時間はぞう組だけで使うことができ、今、週に一回サッカーを始めています。 男の子たちは今までも日中や夕方の遊びのなかで、他のクラスの子の遊びの隙間をぬって楽しんでいますが、この時間はビブスを着て、少ない人数で園庭いっぱいを使って勝敗のある形で行うなどしています。待っている子も同じ色のビブスの応援に盛り上がっています。交代のタイミングで、一際応援に熱が入っていた女の子のAちゃんが、『やっとできる!!』とばかりに出てきました。その時、ふと以前のAちゃんが思い浮かびました。

ぞう組になる前の3月、クラスみんなでしっぽ取りをしました。その時、Aちゃんを含む女の子数名は『やりたくない』と見学していました。普段作ったり描いたりすることが好きで、あまり走ったり、運動系のゲームはしたがりません。普段サッカーなんてしていないので、その頃のAちゃんならこんなノリノリで出てこなかったでしょう。でも、最近Aちゃんたちは自由遊びの中でも、鬼ごっこを楽しんだりしています。

ふと思いました。何がAちゃんたちを変えたのだろうと。

今日までのことを振り返り、出てきたのは運動会のリレーです。練習、本番含め何度も行い、喜んだり、泣いたり、怒ったり、ケンカしたりといろいろありました。Aちゃんは負けるととても泣いていました。それだけ見ると、さらにやりたくない気持ちに繋がっていったでしょう。でも、この時、Aちゃんが泣く度に、一生懸命Aちゃんの背を撫で、慰める同じチームのBくんがいました。そして、ついにAちゃんのチームが勝ったとき、大きなケンカが始まりました。子どもたちのいろいろな思いがあり、ぞう組だけで話し合いをしました。そこでBくんは、負けて泣いているAちゃんのこと、自分達だってくやしかった、でも次がんばろうってがんばってきたと、涙を流しながら、でも思いをぶつけていました。Aちゃんもくやしい気持ちを出しました。この話し合いでは、何が誰が良い悪いではなく、みんながどんな思いや考えを持っているのか、自分とは違う事を知るとても大事な出来事だったと思います。また人のために泣ける子どもたちの心の成長を感じ、とても胸を打たれました。

Aちゃんの今があるのは、もちろんAちゃん自身の心の成長もあります。でも、その成長の影には、負ける度に支え、背中や頭を撫で続けたBくんの手のひらがあると思いました。よく分かるからこその悪いイメージを払拭することは大人でも大変なことです。やってみたら楽しいかもしれないのに…とチャレンジしてもらいたい願いはあるものの、それは強要してしまったら、さらに悪い方向へ進むこともあります。昔から『手当て』という言葉があります。怪我を直すだけではなく、見えない心にも手を当てることで、癒したり、力を与えてくれるのではないでしょうか。

子どもたちの小さな手のひらが時に大きな大きな力になる、ぶつかり合うことで感じられる思いがある、そして、一人の成長がまた周りへと伝播(でんぱ)していく、人との繋がりの大切さを改めて感じました。これからも子どもたちの中で起きる出来事を大切にしながら、目に見えない心の成長を見守っていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

幼児組     坂本   摩利

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