木月保育園のブログ「小さなもみじの物語」

「憧れから悔しさ、悔しさから喜びへ!」幼児組編

2019.12.02

最近は日ごとに寒さが増し外に出る時は上着が手放せない季節となりました。そんな寒さの中でも子ども達は元気に外で遊んでいます。その中でも今人気のある園庭の大きなアスレチック遊具であったエピソードを取り上げてみたいと思います。

今年の9月の中旬に新しくできた大型アスレチック遊具は、3階建てになっていてトランポリンや滑り台、V字ブリッジやクライミングウォール、登り棒等があり、沢山楽しむことができます。

以前のアスレチックよりもかなり大きな遊具になったため、使用を開始する前にどのように遊ぶ事でけがをしないで遊ぶ事ができるか子ども達と一緒に考え遊ぶために必要なルールを決めました。そのほかに、この遊具を使うために新しいルールを1つ保育士から伝えました。そのルールは「人の手を借りずに自分の力でできるところまでいく」というルールです。”この上に行きたいから先生に手伝ってもらおう”という気持ちではこの遊具はできません。挑戦してみてできなかったら、今はここまでしかできないけれど、諦めずに練習して登れるようになるまで頑張るか、今はできるところで楽しむのかは自分次第になるのです。このような新しいルールの基、幼児組の子ども達は日々成長する姿を見せてくれています。

特に挑戦する姿が見られる場所が3階に登るロープの所です。3階は、ロープで登らないと行くことのできない秘密基地のような所なのですが、難関はこのロープです。途中にこぶが2つあるだけなので、手足の力を上手に使って登っていく事が大切になってきます。当初保育士の見立てでは、簡単に登ることができず年に数人登れるくらいなのではないか。と予想していたのですが、園舎から少しだけ見える3階は子どもにとって「あの中どうなっているんだろう?」と憧れの場所となりました。最初の一週間はみんな苦戦していましたが日々の練習を繰り返すことでコツを掴み、足の指の間にロープを挟み上手に登ることができる子が増え、早いもので、今では4歳児、5歳児合わせて10数名登ることに成功できたのです。

今回の主人公は4歳児のA君。A君はそこまで3階への関心は強くなく、自分のできる部分で充分に楽しんでいる様子でした。早々に3階に行くことのできたお友達への憧れの気持ちはあるものの、“どうしても登りたい”と思うスイッチが入るほどではありませんでした。ある日A君の仲良しのBちゃん、C君がロープを登り3階に行くことに成功した姿をみて「2人だけずるーい」とA君は泣き出しました。そう、3階への憧れの気持ちが仲の良い友達が登ったことで”悔しさ”へと変わり、その”悔しさ”がA君どうしても登りたいという気持ちに火をつけたのです。今まであまり興味のなかったロープに何回も登ろうとしてみるもののすぐ落ちてしまいます。ロープから離れていったため「諦めたのかな…」と思ったものの見当違い。近くにあった短いロープで練習し始めたのです。それは、目標を達成するため自分で考えて行動する自主性・主体性が見られた瞬間でした。そして少し経ってからまた長いロープの基に戻ってきたA君。A君は大きく深呼吸をして何かを決心したかのように頷くと、一気に3階まで登ってしまったのです。3階に登るとガッツポーズで「やったー!」と、何回も叫んだのです。それは”悔しさ”が”喜び”に変わった瞬間でした。しかし、その”喜び”も束の間、今度はあまりの高さに降りることが怖くなってしまったのです。しかし、この遊具のルールは一貫して「人の手を借りずに自分の力でできるところまでいく」であるため、降りることも自分でしなくてはなりません。保育士はA君を元気付け「必ず下にいるから大丈夫」と伝え続けましたが涙が止まらずなかなか降りません。そんな時、A君と同じクラスのBちゃんが「私が降り方を教えてくる!」とロープを登り3階まで行きA君を励ましながら丁寧に降り方を教え始めました。さっきまで泣いていたA君は泣き止み、Bちゃんの教えに耳を傾けて前向きに挑戦しようと頑張り始めたのです。Bちゃんは相手の事を想い助け合う気持ちである”社会性”と自分で考え行動する気持ちである”自主性”がA君に安心とやる気を引き出したのです。

その後時間がかかったもののBちゃんの助けもあり、A君は自分の力で降りることができA君とBちゃんは抱き合って喜びあっていました。きっと、A君は今までにない達成感を感じたのではないでしょうか?

「人の手を借りずに自分一人でできるところを楽しむ」という一つのルールが生んだ子どもの成長と社会性・主体性が見られた今回のドラマ。これからもきっと沢山のドラマが子どもの世界の中で生まれるのではないかと思います。色々なドラマをできるだけ見逃さずに捉えると共に子ども達の成長を見守っていきたいと思います。                   佐々木 舞

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