園長日記

2017 年 12 月 15 日 金曜日

 ピアジェが、「赤ちゃんにおける原始反射を用いて、周囲とのやり取りを繰り返すことによって、次第に自分の意志で動かす運動である随意運動が発言する」と主張したことに対して、プレヒテルは、「赤ちゃんの運動は、自発的な運動が主であり、原始反射はそれに含まれているだけである」ということを主張しました。このことは、育児にも大きく関わることであると小西氏は言います。赤ちゃんは外からの刺激によって初めて動くのだということは、赤ちゃんを育てるには外からの関わりがなければならないという考え方にもつながりますが、自発運動説では、赤ちゃんは自ら動き、自ら育つのであるという考え方になり、育児観を大きく変えることになります。つまり、赤ちゃんは自ら動くことによって、他者や周囲の環境を認知するということになります。
 そのために我々保育園は、子どもの自発性を保障し、自発的に関わることのできる環境を用意しなければならないということなのです。しかし、それは、この説が打ち出されたからではなく、私たち保育の現場で、毎日子どもの行動を観察することからわかってくることなので、それをこの説が裏付けたということなのです。
 二つ目の新しい子ども観は、「バランスよく削りながら成長する」ということです。このことも何回かこのブログで紹介してきました。今まで、発達神経学では、新生児は、脊髄や延髄レベルの機能、それを原始反射と呼ぶのですが、その機能によって行動している脊椎動物であるとされてきました。そこでは、神経系の成熟と子どもの行動は1対1で対応していると考えられています。やがて大脳皮質の機能によって原始反射が抑制され、消失するようになると、中脳の成熟と関係している「立ちなおり反射」といわれる運動が出始めます。つまり、お座りや寝返りができるようになるのは、そうした脳の発達によるものであるとされてきました。さらに成熟が大脳皮質にまで及ぶと、つかまり立ちや独り歩きなどの行動ができるようになると考えられていました。
 しかし、原始歩行が消失した乳児をベルトコンベアーに乗せたり、あるいはプールの中に入れると消失した原始歩行が再び出現することが発見されました。それは、行動パターンの変化と神経系の成熟過程が1対1に対応しないことが明らかになったのです。既存の神経学では、この現象は説明することができなくなったのです。そこで、こうした既存の神経学に代わるものとして、脳、身体、環境などとの相互作用を包括的に扱う枠組みを系全体の自己組織性という観点から考えるダイナミックシステムアプローチが提唱されたのです。つまり、環境が行動を変え、それによって脳そのものも変化し、それによってまた行動が変わり、環境もまた変わるという相互的な自己組織化のシステムなのです。
 「環境」と一言で言うと簡単なようですが、ここで言う「環境」とは、将来必要となる、確実に持っていなくてはいけない能力が自発的に育つ「環境」であることから、とても重要であり、難しい内容が含まれていると言うことです。安易に「こういう子に育てたい」とは言えないほど、しっかりと精査した「環境」を用意してあげなくてはいけないのです。ちなみに、木月保育園の考える将来必要となる、確実に持っていなくてはいけない能力とは、自分で考えて行動できる能力と人と関わる能力だと思っています。