園長日記

2017 年 3 月 15 日 水曜日

 子どもたちが数を認識するのは、五感を使ったさまざまな場面で行っていることは容易に想像できます。しかし、それを証明することが困難でしょう。どのように認知しているかを何によって判断するかということが課題になります。世界では、その実験をさまざまな方法で行っているようです。多くは、視線の先がどこを向いているか、何を目で追うか、どのように追うかを観察します。また、吸てつ反応と呼ばれる実験方法があります。それは、赤ちゃんがおしゃぶりを吸う率をはかるものです。
 このようなさまざまな方法で赤ちゃんの数の認識を調べているのですが、そのことから、赤ちゃんは音の数と目の前にある物体の数と1対1対応をつけていることがわかっています。すなわち、赤ちゃんが物体を三つ見せることと、音を三つ聞くということと、脳の中では同一反応するようです。
 赤ちゃんは数に関する天賦の才を持っていますが、だからといって、幼い子どもを数学の夜間授業に参加させるべきだといいたいわけではないと警告しています。生まれて1年の間に、アラビア数字で書かれた計算式や、さらには日本のひらがななどを赤ちゃんに呈示すると、知能を引き上げることができるなどといううたい文句を武器にして商売をする詐欺師がかなりいますが、それは、まったく根拠のない話だといいます。というのは、たとえば、赤ちゃんが1と2と3の計算はできても、4をこえる数に対しては正確に計算できなくなるなど、赤ちゃんの能力は、最も初歩的な算術に限られているからです。
 では、最近までの研究でわかっていることは、「人間の赤ちゃんは生まれながらに、物体を個別化し、小さな集合に含まれる数を抽出するメカニズムを備えていること。」「この“数覚”は動物にもあり、それゆえに言語とは独立で、長い進化の歴史を持っていること。」「子どもでは、数の推定、比較、数えること、単純な足し算と引き算はすべて、明確な指示なしに自然に現れてくること。」「脳の両半球の下頭頂野は、数量の心的操作を司る神経回路を持っていること。」のようです。
 「数覚とは何か?」という本を訳した長谷川眞理子さんは、あとがきで、「本書では、私たち人間の数の理解の根底には、生物進化の歴史で身についた重要な能力が横たわっていることを示している。それは、自分たちを取り巻く環境、自分たちが住んでいる世界を理解するための手段である。これらの感覚情報に基づいて、動物は自分たちの世界を構築する。それと同じように、数に関する直感的感覚があるのだ。」それが、名づけて「数覚」というのです。そして、最近、赤ちゃんの「数覚」についての研究がされてきているのです。
 赤ちゃんの感覚として数字を理解することが出来るというのは驚きですね。いつも思うことは、やっぱり赤ちゃんは天才だなということです。

2017 年 3 月 11 日 土曜日

 先日、全クラスが移行をして、新しいお部屋での生活が始まりました。年長児も1階に来て、今まで以上に複雑で魅力的なおもちゃや教具に目を光らせて、楽しく遊んでいます。
 そんな中、ひときわ人気を集めているのは「点つなぎ」です。数字の通りに線で結んでいくと絵が完成するアレです。簡単なものから出していくのですが、すぐに次々と完成させてしまいます。段々と難しくなると100の数字をはるかに超えた数字も出てきます。こうなると100以上の数字をしっかりと理解して、数を数えられなくては出来ません。しまいには、完成した絵に色を塗って「塗り絵」のようにも楽しんでいます。数字を使ったゲームには「点つなぎ」の他にも、数のパズルのような「数独」やトランプ等もいつも人気です。
小学校に入学寸前の年長児ですが、今、数字や文字にとても興味を持っています。この時期に小学校の授業の先取りで計算問題をさせるとか、掛け算九九を覚えさせるとか就学後の教育をさせることは実はとても危険です。勉強が嫌いな子になるかもしれません。
今こそ、ご家庭でトランプやUNOといったゲームでたくさん遊んでみてください。きっと数字の大好きな子になるかもしれませんよV(^^)
点つなぎ

 

 

 

 


(おたよりの続き)
 みなさんはいつ頃から算数を理解出来るようになったか覚えていますか?理解というのは、小学校に入って習ったたし算ひき算が出来るようになったと言うことではありません。それらのもう少し前に、数字に興味が出てきて1つ2つ…と数えたり紙に書いたりが出来るようになった頃のお話しです。そう考えると「いつの間にか」と答える人も多いかもしれませんね。いつも「1、2、3」と言っているから数字は理解しているのかと思うが、「何個食べる」と聞いてもよく分からないと言うことがありませんか。子ども達はいったいどうやって数を理解していくのでしょうか。
 まず、興味のきっかけの1つは、お父さんやお母さんと一緒に入るお風呂だと思います。「じゃあ10数えたら出ようか」と言って「1、2、3・・・10」「はい、上手に数えられたね」とよくある光景だと思います。その後「次は20まで」「次は30まで」と少しずつ数を歌のように数えることが出来るようになってきます。この歌のように唱えることを数詞と言います。この頃から、色々な場面で数を唱えるようになり、階段を上がる時にも口ずさみながら登るようになります。
 次に周りにあるものを数えることが出来るようになってきます。おもちゃの数やおやつを取り分ける時などにも「1、2、3、3個づつね」や「1、2、3、4、5、電車が5台あるね」とです。そして、数への興味がさらに湧いてくると、紙に数字を書くことをするようになります。
上にあげた「数詞」や「具体的な物の数」、「数字」、これにサイコロやドットなどで表す「抽象物」、これら4者の関係が全て理解できた時に初めて、数字を理解できたと言うのです。どれか1つでもかけていると何だか分かっているような、いないようなということになるのです。 
 これらのことを小学校に上がる前にあそびやおもちゃ、生活を通して学んでいくのが保育園での教育、つまり就学前教育なのです。この就学前教育を丁寧に行うことが、将来の学習に対する意欲や興味、粘り強さなどの非認知能力を育みます。
 小学校に上がる前に、この就学前教育をきちんとしないと、学校に入ってからだと間に合わないと思っています。しかし、今の幼児教育の中で多くの園で行われているものは、「就学後教育」の先取りが多いような気がします。中教審が出している答申の中でも就学前教育についてこんな注意がされています。「受験などを念頭に置き、もっぱら知識のみを獲得することを先取りするような、いわゆる早期教育とは、本質的に異なる。」といっています。必要なのは、就学前教育なのです。これは、学校教育の先取りではなく、学校教育が始まったときに、それがより効果的に、より広く考えられるようなものでなければなりません。
 また、英語を乳幼児の時から学ばせる家庭も増えていますが、外国語を習得するのに欠かせないことが「文法」です。これは論理性が身についていなければ習得できません。この「論理性」を獲得する上で欠かせない学習が「さんすう」なのです。「物を筋立てて考えるための基礎」が「さんすう」です。お子さんをグローバルな人間にしたければ、以上のことを踏まえなければなりません。
 園でもこのことを踏まえ、遊びながら生活しながら数字に興味を持ち、学んでいける工夫を随所にしています。どうかご家庭でも、無理に勉強を教えるようなことはせず、遊びを通して色々なことに挑戦できる工夫をしてみてはいかがでしょうか。

 

3月15日ごろ乳児の数の認識について載せます

点つなぎ2