赤ちゃん研究

「模倣の進化」

2016.01.29

 最近、あひる組の子ども達がすごいっていう事をご存知ですか?何がすごいかと言うと、関わり方がすごいんです。例えば、あひる組の子どもがおもちゃで遊んでいる時に、突然ひよこ組の子どもがやって来ておもちゃを持って行ってしまうという事が起きます。通常このような時は、1歳頃の発達では、自分の物を取られまいと、噛みつきやひっかきをしてこれを守ろうとします。しかし、最近よく見かけるのは、仮におもちゃを取られても相手を見て、何も言わずに貸してあげるという姿があります。もちろん全員がこの様な事が出来るわけではありませんが、この様な関わりをする子がたくさんいるのです。
このような様子は何気ない関わりで、当たり前の様に聞こえるかも知れませんが、決してそうではありません。2,3年前でしたら木月保育園でもこのようなやり取りが原因の噛みつきが絶えませんでした。1人がやり始めると別の子がこれを真似て、更に別の子を噛むという負の連鎖が繰り返されていたのです。
しかし、このような連鎖を断ち切るべく、職員みんなで話し合いました。そして、出した答えが、「良い行いを真似してもらう、正の連鎖を起こそう」という事でした。これ以来、現在に至るまで、子ども達との1人1人に対する関わりや行動を先生が見本となり、良い行いを子ども達に真似てもらうようにしています。これらの活動を行ってきた成果が、今のあひる組の子ども達に見られるようになってきたのです。今ではひよこ組の子ども達にも正の連鎖が受け継がれているようです。
赤ちゃんが大人や周りの子どもを真似るという事は大昔からされてきました。一説には人類が今まで生き残れたのも、この真似るという行為があったからだとも言われています。そう考えると、あひる組の子ども達の姿はとても誇らしいですね。これからも、多くの人との関わりを通して、真似るという事を大切に保育をしていきたいと思う今日この頃です(^―^)V

(おたよりの続き)
赤ちゃんがヒトのまねをするという発達についての研究があります。この研究の経緯を見ると、いつ頃からするようになるかということが最初はテーマだったような気がします。そして、その模倣は、人類にとってどのような意味を持っていたか、他の生き物でも模倣をするかなども併せて研究されてきました。その中で、最近分かってきていることは、生まれたばかりの赤ちゃんでも、すでに他人の表情を模倣する能力をもっているということです。自分には舌があり、どこをどう動かせば舌が出るのかということは分からないはずの赤ちゃんが、目の前でゆっくりと舌を出してみせると、同じように舌を出し、口を開けてみせればやはり口を開けるということが分かっています。しかも、その赤ちゃんは新生児頃から模倣をするのです。
 ただし、この模倣は「新生児模倣」と呼ばれ、生後6-8週ほどで消えてしまいます。その後、生後8~12ヵ月ぐらいから赤ちゃんは再びまねをし始めます。この頃になると、大人のまねをして「おつむてんてん」や「ちょちちょち あわわ」などをやり始めます。しかし、同じ模倣と言っても、新生児のころとはまったく質が違います。まねをしながら楽しそうに声を出し、笑顔が見られます。それは、お互いの気持ちが共感し合い、重なり合ったコミュニケーションになっているのです。こうした模倣が、自然発生的に出てくるのはヒトだけだそうです。
 たとえば、よく「猿まね」ということがありますが、サルの中で優れた知能を持ったチンパンジーでさえ、まったく真似をしないわけではありませんが、とても苦手です。とくに、意味のない行為の真似は、その行為が簡単なものであってもほとんどしません。京都大学霊長類研究所で言葉や数を憶えたボルボというチンパンジーは、瞬間的な記憶能力は人間より優れていますが、そのチンパンジーでさえ模倣するのは苦手だそうです。
 しかし、生まれたばかりのチンパンジーには、ヒトと同じように新生児模倣が見られることが分かっています。これは、自力で母親にしがみつくことができないヒトとチンパンジーの赤ちゃんが、母親の注意を引きつけておこうとして行う、生まれつき備わった能力ではないかと考えられています。母親と生まれてすぐの赤ちゃんのコミュニケーションにおいて、模倣は大切な役割を果たしているのです。しかし、チンパンジーにおける模倣は、ヒトと違って、その後再度行われることはほとんどないそうです。
 では、この模倣は、どのように進化してきたのでしょうか?サルと人類が同じ祖先を持ちながら、どこで分かれてきたのでしょうか?

「猿まね」ついて2月15日ごろHPに載せます

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