園長日記

2012 年 12 月 15 日 土曜日
東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科の山根直人氏は、「赤ちゃん学カフェ2」という雑誌の中で、「乳児の音楽性」について最近の研究を紹介しています。 赤ちゃんは、お父さんやお母さんが語りかけるように歌って聞かせるのを好むように、保育園でも、自然な歌いかけを赤ちゃんは求めています。同時に、何か身近なものをたたいたり、触れたりして音楽を創り出したりする身近な音そのものも求めているようです。最近は乳児のお部屋でも太鼓のように叩ける箱を用意しています。その箱を職員と一緒に叩きながら子ども達は喜びます。それは、ピアノを伴奏に朗々と歌うのと違って、語りかけるような音楽だからかもしれません。 一時、赤ちゃんのころからの早期教育として「絶対音感」の存在が取り上げられてことがありましたが、最近の研究では、赤ちゃんは一つひとつの音の大きさや高さを聞いているのではなく、もっと高度に音楽を聴いていることが示されてきました。それは、音楽の音をただの音の連続して聞いているのではなく、楽曲や旋律として聞いていることがわかったのです。たとえば、絶対音感として音を捉えるのではなく、子守唄では低い音域で歌われた楽曲に選好性を示し、遊び歌の場合には高い音域で歌われた楽曲に選好性を示すことが報告されています。 では、音楽を聴くという能力だけでなく、自ら音楽を作り出すという、歌ったり、演奏したりすることはどのように発達するのでしょうか。この能力も、最近の研究では、かなり早い時期から赤ちゃんは非常に高度で多様な音楽的表現をするようです。まず、生まれてしばらくした赤ちゃんは、自分の声でいろいろな表現をするようになります。その声の中に、音楽的な喃語が存在することが報告されています。しかし、この喃語を発するためには、何かの音楽的刺激に対して積極的に関わろうとする意志の反応として現れるようです。 そして、次第に歌とことばに分かれてきます。そのときの歌唱表現には、大きな個人差を持ちながら、さまざまな特徴を持ち、一様の発達ではなく発展していきます。そこには、幼児独特の世界があるのではないかと山根氏は発表しています。大人が、子どもたちに正しい音程や音高で歌わせようとする指導を保育者はすることがありますが、それは、大人の基準であり、幼児は幼児なりの一定のルールの中で歌い、自分の出した声を基準にして、聞いて覚えた歌の音程も正しく歌っていることを明らかにしています。そんなときに、大人から、子どもが自分の「正しさ」を否定されることによって、音楽が嫌いになってしまうのではないかと警告しています。 そして、最後に山根氏は、こう提案します。「音楽は赤ちゃんや子どもにとってはとても身近なもので、生活の一部であって、遊びであって、自己の表現手段でもあるわけです。したがって、赤ちゃんや子どもが音楽を楽しみ、より音楽に親密になっていけるように援助するためには、教師や保育者の視点からではなく、赤ちゃんや子どものありのままの表現を理解し、受け止める姿勢が必要だといえるでしょう。」 先ず、子どもの姿、心があり、そこに自然と働きかけることが重要で、その気持ちは、大人にとっても、何かを教えよという意図があるものではなく、子どもを楽しませたいと思う素直なものであるべきでしょう。 自ら伸びていこうとする子ども達をこれからも見守っていきたいと思います。