園長日記

2011 年 7 月 29 日 金曜日
 私は、常々赤ちゃんは科学では計り知れないほど素晴らしい能力を持っていると、赤ちゃんを見るたびに思っています。宇宙が誕生してから1秒間の間に、これから起きうるすべてのものがそろったといわれるように、人間は、生まれてから数年間の間に、これからの人生を生き抜いていくための能力を身につけていく準備がすべてそろう気がします。その準備されたものを、環境がどの様に引き出していくかが教育の課題であるのです。子どもは、白紙で生まれ、そこに絵を描いていくように、何も知らない、何もできない赤ちゃんが、いろいろなことができるようにすることが育児であり、学問的に確立された知識や情報を教えることが教育であると思っている人はいまだに多くいます。伝統的な幼児教育の「大人が完成された人間で幼児は未発達で無垢な存在だ」というイメージや、幼児のように理解する能力のない段階では教育は無意味だと考えられてきた常識は、最近の脳科学の成果によって否定されてきています。今は赤ちゃんの能力についてこんなことが分かってきました。 (おたよりの続き)   出生後の脳の重さは、最初の数年間で急激に変化します。出生時に約400グラムだった脳は、1歳で800グラムになり、4~5歳のころには1200グラムほどになり、すでに大人の約80%前後にまで重くなります。しかし、神経細胞は基本的には細胞分裂して数が増えることはありません。これは、細胞の数の問題ですが、実はこの細胞をつなぎ合わせる道ともいわれる神経細部をつないでいるシナプスの密度も、脳の多くの部位で1~3歳前後にピークを迎え、その後は、数年かけて3分の2程度にまで減少していくのです。それなので、赤ちゃんは、出来ることが毎日少しずつ増えていくということではなく、出来ることを出来なくしていくことが発達だということです。必要な機能を残し、必要ではない機能はなくしていくのです。赤ちゃんの頃には、人の顔を見分けるのと同じように、サルの顔を見分けることが出来たり、母親の母乳の匂いをかぎ分けることが出来たりと、大人以上の能力を持っているのです。この時期はとても重要な時期でこの時に何でもやりすぎてしまうと反対に出来ないことが増えてしまうのです。子ども達の行動には無駄なことは何もないと言われています。大人から見るとなぜそのような行動をするのか理解できないことをしている時も多々あります。しかし、その行動こそがその子の成長にとって今一番大切ことなのです。だから、何でも与えすぎてしまい、必要な力をなくしてしまうのではなく、じっくりと子どもの育ちを見ながら、今必要な関わりをしていかなくてはならないのです。    これらのことは1970年代に報告されたことですが、日々脳は、いろいろなことが解明されてきています。   次回は8月13日に更新します。お楽しみに!
2011 年 7 月 15 日 金曜日
 子どもにとっては、信頼している人にいつでも「見てもらっている」という意識も持つことが重要なのです。子どもにとって、ベースキャンプともいう安心基地が必要なのです。そばにいる人を見つめるのは、助けてくれということだけでなく、また、いちいちやっていいかを聞いているのではなく、ちゃんと見てくれているだろうか、もし何かあったらすぐに助けてくれるだろうかという確認なのです。その確認が取れると、脳内の報酬系が活性化して、ドーパミンという喜びを感じたときに出る神経伝達物質が放出されるのです。  茂木さんは、「子どもの発達にとって父母などの保護者が与える心理的な「安全基地」が不可欠です。問題行動を起こす人の多くに、どうも幼いときにこの安全基地となる環境が欠けていたらしい。そこで、保護者が子どもたちの幼いころにこの安心感を与えることが、一番大切なのだと提唱した。」と言います。「子どもが果敢に新しいことに挑み、冒険することができるのは、失敗しても守ってくれる、自分には帰る場所があると思うことができる“安全基地”があってこそだ。安全基地があることで、目新しいこと、不確実なことに対して意欲的に向き合おうという気持ちが起きる。」  しかし、茂木さんは、この概念をもう一歩進めています。それは、脳科学からわかってきたことのようです。この安全基地という概念は、もともとは子どもと保護者間の問題であったのが、実は、もっと広く、コミュニケーション全般に関して言えることとしています。人間は、誰にとっても、他者とのコミュニケーションほど常に目新しく、不確実なことはないので、「安全基地」が必要になると言います。   信頼感を持てる人が親から先生、友達へと少しずつ人数を増やしながら、自分自身が安心して過ごせる社会を形成していくのです。保育園での生活でも安心感を持てる人をたくさん作り、心地よい環境を築いてもらいたいと思います。