人との関わり

「深まる遊び」

2015.09.30

 最近、子ども達の遊び方が変わってきたように感じます。特にそれは幼児組での遊び方です。以前は子ども達それぞれが思い思いの遊びを行い、時には自分の思いを叶えるために友達とケンカをしているという姿をよく目にしました。おままごとゾーンでは、一人一人が料理を作り場所争いをしていたり、ブロックゾーンにおいても珍しいパーツを取り合う姿がありました。
 しかし、最近は、自分の思いをというよりは、友達と思いを共有して遊ぶという姿が目立つようになってきました。先日も積み木ゾーンにおいて、1枚の写真を見ながら、「ここには柱が必要だ」「ここは傾いているからこうやった方が良い」など小さな建築家が立派なお寺を建築するための打ち合わせをしながら・・・積み木を積み上げていました。
 「遊びの深まり」とは何かと考えた時に、一人遊びには限界があるように思います。人は様々なものから影響を受けますが、特に友達から多くを学びます。しかも、その多くは自分より少しだけ良くものを知っている子とか、少しだけ上手に出来る子とかです。相手の話しを良く聞いて、相手の意見を自分のものに出来る能力は、人としての特性だと思います。この様な力が身につくのはやはり、日々の体験や経験を通して、話し合いの場所を意識的に作ってきている成果だと思います。
 どうか保護者の皆様も、日々の忙しいお時間のほんのわずかな時間で構いません、お子様の話しにちょっとだけ耳を傾け、言葉のキャッチボールを意識してみてください。その様な大人の姿勢を子どもは見習い、人と関わる力を身につけていきます。

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(おたよりの続き)
 今の若者、子どもたちは会話・対話が苦手だと言われています。今までの教育の成果として、みんなの前でプレゼンする能力は着き、自己主張をする能力も身についてきました。しかし、相手の話を聞き、その内容に沿って自分の考えを述べるという対話能力とか、相手の話を聞くことによって、相手の考えていることを感じるというような能力は劣ってきてしまったと言われます。幼いうちから話し合う経験が少ないからのような気がします。それは、もしかしたら、親や大人が、子どもの考えをじっくり聞くこと、そして、きちんと言葉のキャッチボールをすることが少なくなってきたことも原因かもしれません。
 私たちホモ・サピエンスは、社会の中で分かち合い、助け合い、協力をすることで生存してきました。そのためには、人類は話し合うことをしてきたのでしょう。そして、お互いの話を調整して決めてきたのでしょう。ある時期、一人の人の意見が強く、その他の人は黙ってその人の言うことを聞き、その人の言うとおりに動いたこともあったでしょうが、それは、人類を滅ぼすような結末を迎えることもありました。
 新しい概念を学習するときには、話し合いがいろいろな場面で様々な役割を果たします。全米乳幼児教育協会の指針や全米科学教育スタンダードに準拠している本である「Science Experiences for the Childhood Years」では、話し合いの様々な場面での役割を、このように書いてます。まず、導入場面での話し合いです。そこでは、新しいトピックへの興味をかき立てると言われています。そのような場面では、教師は、子どもたちが個人的に出会った出来事を思い出したり、その課題について知っていることを出し合ったりするように促すことが必要になります。この時、子どもたちの個人的な理論に明らかな欠点があっても否定をしてはいけません。子どもたちがこれから行う活動で何を発見したいか、自分で問いを考え出すように促さなければなりません。
 次に、小グループでの話し合いの場面です。このときには、子どもたちの行った活動について話し合うことが必要になります。自分たちが調べた活動で何が起こったかを整理したり、自分たちの考えをはっきりさせたりするために話し合いをします。ひとつの活動から二つ以上の結論に達することもあるかもしれません。しかし、これが子どもの素朴理論を変えるきっかけにもなるのです。
 そして、クラス全体で行なうまとめの話し合いの場面です。それぞれのグループが体験活動で調べた概念を持ち寄ります。こうすると、子どもたちは新しい概念になじめるようになるのです。そして、持ち寄った中で話し合いをすることによって、関連した情報を取りまとめることもできます。個々の概念を結びつけることができるのです。
 子どもたちが自分の考えや体験を表現しようとするときには、まず教師が子どもたちの表現を尊重する手本を見せる必要があります。そうすることによって、子どもたち自身も、グループでの話し合いでお互いに学びあえるようになります。
 毎日の関わり方を意識することで、子ども達の人と関わる力が大きく変化していくのですね。そう考えると、大人も子どもと関わる姿勢を意識しなくてはいけませんね。ちょっとした時間の関わりを大切にしていきましょう。

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