食育

「アメリカの戦略???」

2015.08.31

    園での給食には9割がた、ご飯が出ます。しかも、栄養価の高い玄米の部突き米です。秋田の農家から直接、玄米のまま送ってもらい、それを園の精米機で精米します。精米したてのお米はそうでないものと比べて格段においしく、それを園の子ども達はよく分かっていて、おかわりも良くします。
また、よりお米に興味を持ち、その栽培の大変さや難しさを少しでも分かってもらうために、秋田の同じ品種の種もみを送ってもらい、苗を育てる所から、米の栽培を行っています。収穫後の作業も行った上で、おにぎりパーティーを行います。その日は通常より多めにお米を炊いているのですが、それでもご飯がなくなってしまいます。いつもたくさん食べる子はもとより、あまりご飯を食べない子も、この日はたくさん食べるのです。今年ももうすぐ収穫です。大人も子どもも楽しみにしています。
 子どもは興味を持ち、自分でやった事への達成感を味わった時に、大人が想像出来ない程の結果を出します。また、その興味を持ったものへの想いや愛情、感謝といった心も一緒に育ちます。そのような気持ちの面もついてくるからこそ、お米一粒一粒を大切に、残さず食べようという想いや作ってくれた人に対する感謝の気持ちも出てくるのです。
「実るほど首を垂れる稲穂かな」。この言葉の根底にある、自然界の生きとし生けるものへの感謝の気持ちを、小さいうちから育てられたら良いなと思っています。

(おたよりの続き)
 学校給食の献立が洋風あるいは中華風の料理であることが多く、大人になった時の嗜好がどうしても和食離れになってしまっています。それは、給食の主食が長い間パンだったからです。その点、米飯というものは素晴らしく、和風はもちろん、洋風にも、中華風にも合います。洋食屋に行っても、「ライスにしますか?パンにしますか?」と聞かれますし、中華料理店に行っても、ライスを頼むことができます。しかし、和食屋に行って、パンはたのみません。
このように万能な米飯給食は長い間学校給食では行われませんでした。「日本人のひるめし」という本の中で、著者の酒井さんはこう指摘します。「パン中心の学校給食では煮魚ではなく魚のムニエル、ホウレンソウのおひたしではなく、ホウレンソウのバター炒め、つまり洋風の味付けをしたおかずが主役をつとめることになる。そのような給食のメニューを通して、児童の好みは次第に変化していき、成人した後の嗜好にも影響が現れてくるのである。」
最近の家庭の食事から、日本の伝統的な食事である和食が次第に姿を消してきたのは、これだけの理由ではないと思いますが、酒井さんの指摘には一理あるかもしれません。それは、今に始まったことではありません。戦後、食糧難の時代では、日本人には食べ物を選択する自由はなかったと言います。米が手に入らないのであれば、とにかく小麦粉をはじめとする放出の食糧を食べる以外に、生き延びる道はなかったのです。こうして、日本人は知らず知らずのうちに小麦粉を食べる習慣を身につけてきたと言われています。誰にでも悪評の高い脱脂粉乳でも、戦後の子どもたちの栄養をまかなうために、大いに貢献したのです。こんな時期では、好き嫌いも、残食もなかったでしょう。食べられるだけでありがたかったのですから。
酒井さんは、このころの食事に影響したのは、それだけでなく、豊かな国アメリカの食生活へのあこがれもあったと言います。その憧れもあって、日本で昔から行われてきた小麦粉を使ってうどんなどの麺類を作ることから、パンを作るようになり、戦前のパンがアンパンやジャムパンなどの菓子パンとして米飯の補助食やおやつとしての食べ物から、米飯にかわってパンが主食として食べる食習慣が広まっていったと言います。
子どもの頃には、朝食はパンが中心に変っていました。その理由の一つに、パンを食べた方が賢くなるという説が信じられていたからです。どの家庭でも競ってパン食に変わっていきました。その説は、今は、どこにいったのでしょうか?
実はここにアメリカの食糧援助戦略が関係していたのです。学校給食はアメリカで余った食料のまたとない受け入れ先だったのです。その主なものが、脱脂粉乳や小麦だったのです。同時に、その食糧援助が日本人の食習慣や嗜好少しずつ変えていったのです。その経緯が、祖田修氏の「コメを考える」という本の中に書かれてあります。
「昭和20年代から30代にかけて、“米を食べると頭が硬直してバカになる。小麦を食べると頭脳が弾力的になって賢くなる”、“三度三度コメを食べるとガンになる”などというまことしやかな説が、こともあろうに一部の農学者やジャーナリズムによって流布された。そして、最近、これらのキャンペーンが余剰穀物を処理する目的で、膨大な宣伝費を使い、意図的になされたものであることをアメリカは認めている。」と言っています。
いつの時代でも、どんな分野でも根拠のない説がまことしやかに語られることがあるようです。

 

パン給食から変われない給食ついて9月15日ごろ載せます。

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