伝統行事

二十八宿

2013.11.15

   オリオン座のような、誰でも見つかるような形の星座がきれいに見られる季節になってきました。これらの星座の輝きが秋から冬の夜空を飾っています。それら星座にまつわるギリシャ神話は西洋の物語ですが、織り姫、ひこ星に代表されるように東洋にもあります。もちろん、江戸時代までの星座は、この東洋のものを言っていましたが、明治維新以後、西洋文明が取り入れられ、すっかり西洋のものとなってしまったようです。
 東洋では、太腸が天球上を運行する黄道上にそって一周するその円周を28等分にし、それぞれブロックごとの位置の近くにある星座が割り当てられました。その各々のブロックを星が泊まる宿という意味で、「宿」といい、それに星座名をつけたのです。ですから、全部で二十八宿になります。月はある恒星に対して、27日7時間43分2.5秒で天を一周しますので、天を27、または28で区分するのが便利だと考えたのでしょう。というわけで、月は1日にこの二十八宿の一宿ずつ通過していくと考えられました。
 この二十八宿は中国からインドヘ渡り、インド占星術として発達し、唐時代に中国に戻り、それが空海によって806年に日本へもたらされたと考えられていました。しかし、奈良県明日香村で発掘されたキトラ古墳の天井壁画に星座が描かれていたので、今は、空海以前にすでに日本へ入ってきたと考えられています。
 この二十八宿の中の二十三宿は距星名を「鬼」と言われ、和名「たまおのぼし」でギリシャ神話のかに座θを指します。この鬼宿にあった日にお釈迦様が生まれたと言い伝えられるところから、鬼宿日が「万事に大吉。二十八宿のなかで一番ラッキー宿」ということになったのです。
   昔の人は自然のことをとても大切にして、いつも感謝の気持ちをささげていました。今の生活があることに幸せを感じ、家族が健康に育つことに願の全てをかけていました。この二十八宿という考え方もそのような所から来ているのですかね。現代は健康面も食生活も豊かになり過ぎて、大切なものを忘れてしまっているように感じます。もう一度、昔の人の暮らしを思い出し、今の幸せに感謝の気持ちを持つことが大切ですね。

 

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