赤ちゃん研究

「模倣からのコミュニケーション」

2016.02.29

   2月に行われたクラスの移行に伴い、ぞう組の子ども達は、今までの異年齢のクラスではなく、小学校での生活を意識した同年齢での生活を始めました。これは、小学校に行ってからの生活に少しずつ近ずけていくためで、今までは出せなかったより高度な遊びやゲームも楽しめるようにしています。1人で楽しむのではなく、数人で行うゲームを通して、人との関わりを増やしていきます。また、文字や数字にもたくさんふれる機会が出来るように数独や点つなぎ、児童書等も用意されています。
  この様な環境で過ごしていくことで、「年長らしさ」の様な姿を目にする機会が今まで以上に多くなりました。時計を見ながら遊びを切り上げ、次の活動に移ったり、外での活動の時には帽子を自分で取りに行き準備をして待つ等の姿も見られます。誰かが気が付くとそれに別の誰かが気づき、次第に自分から行動に移せるようになってきているのだと思います。このように園での生活は日々社会を学ぶ場となり、子ども達の成長を促しています。もうすぐ一年生。立派な小学生になれそうですね。

(おたよりの続き)
   大昔から人類は、危機を乗り越えるために、社会を作り、協力して生存してましきたが、そのキーワードが「模倣」だと言われています。相手を自分と重ねて見て、相手になりきり、相手の期待を捉えて応えていけばいいのですが、その「相手になりきる」ために獲得した機能が「模倣」ではないかと考えられています。しかし、チンパンジーもヒトも 新生児期にはある程度の模倣能力を持っているのに、ヒトだけが模倣能力をぐんと発達させていくのはなぜなのか?その機能を引き出すための環境が影響しているのではないかと言うのです。「周囲の大人が無意識に子どもに模倣させるような育て方をしているからだと思います。」と言うのは、明和政子さん(京都大学大学院教育学研究科准教授)です。彼女はどのような環境が模倣の能力を増していったかを言っています。
ヒトの場合は、模倣を中心としたコミュニケーションを通じて、他人からたくさんのことを学びます。まずは他人の模倣をすれば、一人でゼロから試行錯誤的に学ぶ必要はないわけです。まず真似て、そこから修正していった方が効率的です。人類の脳の機能は、まずいろいろとすべてをつけ、そこから削っていく方が効率的だということで、そのようにできているのです。
   そして、人類は、身につけたこと、獲得した高度な機能を次の世代に伝えていかなければなりません。そのときの手段では、もちろん言語によることが多いのですが、この模倣によるところが非常に大きいと思います。模倣は、ヒトの文化を大きく発展させた一つの要因だと考えられています。
模倣の苦手なチンパンジーですら、少なからず環境の影響を受けるということがありますが、逆にヒトもまた、ヒトらしい環境で育てられない限り、ヒト特有の模倣能力を発達させることはできないといいます。
それでは、ヒトらしい環境とはどのような環境なのでしょうか?なぜヒトは他人の身体 の動きまでそっくりそのまま模倣するように進化してきたのでしょうか。ヒトにとって模倣とは、コミュニケーションを円滑に行うための手段であり、生きていくために欠かせないものだということは、コミュニケーションをとる相手の模倣から始まります。まず、身近なお母さん、次第に、きょうだい、祖父母、次第に友達、地域の人たちへと広がっていきます。そして、思春期になると、スポーツ選手や、イメージの中の理想の人物だったりするでしょう。さまざまな人と出会い、まねしたりまねされたりする経験の中で、ヒトは幅広い知識や技能を身につけ、心を発達させていくのです。
 ぞう組さんのあの「年長らしい」姿もこうして身に着けていったのですね。小学校に行くと、益々、人との付き合いの幅が広がります。更なる成長が楽しみです。

模倣させる環境について3月15日ごろHPに載せます

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